梅雨もようやく明けようとする夏のはじめ。公演を間近に控えた即興劇団『ヒステリカ』は、最終の追いこみに余念がない。

 脚本のない即興劇という特異な芸風と堅苦しい規律ゆえに、存続が危ぶまれていた弱小サークルではあるが、春には待望の新入団員を迎え、新たな体制での第一歩となる節目の公演である。

 裏方の手配も終わり、大小の道具もあらかた準備でき、あとは仕上げの調整を残すのみ。

 最後の日曜日は舞台前特有の緊張を孕みつつも、いつも通り気の置けない遣り取りのうちに幕を閉じる。

 だがそれは同時に、まるで劇中の世界が現実に溶けだしてくるような、不可思議で過酷な最後の一週間の幕開けだった……。

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